不動産活用と言えば建築会社や仲介会社を思い浮かべる方が多いことでしょう。
しかし、実際には建築会社や仲介会社が活躍するのは、指針が決まった最後の出口、ソリューションメニューが具体化された時です。
不動産活用を検討する時に大切なことは「活用する目的」は何なのかを明確にすることです。例えば、「相続税対策」なのか「遊休地の収益向上」なのか等、その目的を具体化することに始まります。
リスク評価を行い、効果測定シミュレーションを行うところまで検討してから実施すべきです。
現状把握の必要性
前に述べた通り、不動産活用の目的を明確にすることが最初の一歩です。それでは、どうすれば目的の明確化が図れるのでしょうか。私が個人的に実施していることは以下の通りです。
現状資産の棚卸
棚卸と言っても具体的にはどんなことでしょうか。自分は何を何処に所有していて、その価格はいくらなのか。そして、それらの資産は収益をもたらしているのか。現状の問題点や将来のリスクとして考えられることは何か。整理すると以下に集約される。
- 金融資産・不動産の所在確認
自分がいくらのお金を持っているのか、土地を相続したけど見たこともないし、何処にあるかも知らない。こんな状況では、正しい投資戦略の検討は難しいと思いませんか?まずは、自らの基礎情報を整理することから始めましょう。
- 個々の資産の収益性・リスクの確認
金融資産の運用状況や所有不動産の収益チェックを行いましょう。金融資産においては元本保証がない商品に投資している場合、現状の運用実績を把握することが大切です。劣化に気づかず、赤字拡大などという状況は回避したいところです。
不動産も同様です。貸ビルや駐車場も、空室(車)率が高ければ、ランニングコストに負けてしまい赤字経営を強いられることになります。また、メンテナンスコストやメンテナンス頻度を記録しておくことも大切です。
利益が無いと次へのステップアップができなくなりますので、現状を把握し、健全な運用ができているかどうかを確認しましょう。
財産評価
棚卸の次は、財産評価です。現状の財産の評価額がどの程度なのかを把握します。このまま数年後に相続開始ということになったら、家族はいくらの相続税を納めなければならいのか。
現金を不動産に変換することが財産評価圧縮になります。
現金の1億円は1億円評価。1億円で建物を建築すると、約7割となり、さらに、その建物を賃貸すると、また、7割評価となります。
そうすると、約50%の評価、つまり1億円の財産評価が5000万円に圧縮されるということです。
人により保有資産は異なりますので、財産評価額も異なります。つまり将来の相続税に関するリスク負担は個々に異なるのるので、自らのリスクを把握することが必要です。
前述と重複しますが、財産評価と合わせて、個別資産の収益性は確認しておくと、次の一手が打ちやすくなります。
例えば、多い事例は、アパートを所有しているが空室が目立つ上に、修繕費が嵩み収益が殆どないといったケースです。先代から相続をうけたアパートで、借入金を完済していると、定期的に収入があるので放置しがちであるが、物件は確実に老朽化していくので、メンテをしないと機能が低下します。
また、近い将来、建替えが必要なほど劣化していれば、立退き問題も検討しておくべきでしょう。
パートナーを選ぶ
ここまで述べてきたことを実践するためには専門家の力を借りる必要があります。決して自分一人でできることではありません。

- 税理士
- 測量・土地家屋調査士
- 弁護士
- 司法書士
- その他
上に述べたのは一部ですが、少なくとも専門家の力を借りる必要があるということです。しかし、これだけの分野の専門家をどうやって選択すればよいのでしょうか。
- 多岐にわたる専門家をコーディネートできる人
- 自分自身のブレインを使う
いくつか考えられますが、信頼できる人や組織を活用することです。但し、忘れてはならないことは、自分自身もある程度の知識を蓄えておくことです。
「優秀な人材の力を引き出すためには、自分自身のレベルを上げておくこと」も必要です。
まずは基礎知識は自分で勉強して身につけることをおすすめします。
マーケットの確認
アクションを起こす検討をするに際しては、マーケットを良く見ておく必要があります。
土地活用には投資が必要なケースが多いです。したがって、リスク要因は確認し、ポートフォリオをどう組むかという意識が必要です。決め打ちせずに俯瞰して検討することです。
最近では「利上げ」や「建築費高騰」など注意すべき要素が顕著に表れています。
- 金利動向
- 株式市場
- 為替市場
- 周辺不動産市況
(分譲・賃貸市場、土地価格動向など) - 建築費動向

対象不動産のポテンシャル
対象不動産が持つポテンシャルを把握しましょう。簡単に言えば、所有不動産に何をさせれば一番効果が高いのかということを調べましょうということです。
チェックポイントは以下の通り。
- 住宅エリア or 事業用エリア
- 建築法規
(用途地域・建蔽率・容積率など) - 道路幅員・道路種別・都市計画道路
- 周辺賃料相場
- 売買事例
- 周辺施設
(商業店舗・病院・学校・鉄道など) - その他
収益性が高い店舗ビルを作りたいと思っても、店舗ニーズが無ければ成立しません。保有コストを下げたいのであれば、住宅の特例を活用するのが得策かもしれません。事業目的やマーケット、不動産の持つ特性を良く確認して企画実施することです。
投資メニューの検討・選択
一通りの調査を終えたら、その調査結果を分析して投資メニューを検討します。最初に立ち戻って、検討を始めましょう。
- 金融資産や不動産活用の目的は何か
- 何をすれば効果が高そうか
- 万一の際のリスクに耐えうるソリューションか
建築することも一つ、マンション(新築・中古)購入も一つ、暫定的に駐車場としての活用もあるかもしれません。安全性・収益性・換金性を加味して、全体資産のバランスのとれた方針決定をされることを目指したいですね。
昨今の状況では、土地価格以上に建築費の高騰が大きなリスクとしてアナウンスされています。このような状況では、どういった方針をもって活用検討するか。俯瞰して物を見る必要がありそうです。