企画概要をイメージし、敷地調査や周辺マーケットを調べた後に行うのが建物計画です。その際に欠かせないのが建築法規や地区計画などの規制を知ることです。敷地調査の際に、役所ヒアリングすることをお勧めしました。対象不動産に課された規制の中で、どのような建物が建築できるのかを把握することがポイントです。
建築法規のチェック項目
下記に建築法規チェック項目を一覧表にまとめました。役所でヒアリングする際の整理に活用できればと思います。また、用途地域一覧も添付します。
用途地域によって建築できる建物用途が制限されます。例えば、「住宅は建築できるが、店舗は建築できません。」といった制限です。建物計画の際には、周辺マーケットとあわせて、必ず用途地域の確認もしましょう。

↓一覧表は下記をクリック↓
用途地域一覧(東京都HPより)
対象不動産が2つ以上の用途地域にまたがる場合は、過半以上の属する区域の規制を受ける事なります。例えば、1000㎡のうち400㎡が商業地域で、600㎡が第一種低層地域の場合は、第一種低層地域の規制をうけることになります。
<参考図書>
以下に書く記事内容も、ほとんど網羅されていて、手引きとして活用するのには最適な書だと思います。
都市計画区域・開発行為のポイント
都市計画とは「都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地再開発事業に関する計画」ということですが、下表にある市街化区域と市街化調整区域という言葉を記憶しておけば概ね問題はないと思います。
一般的な住宅地や商業地、産業地帯などは市街化区域であることが多いです。市街化調整区域は市街化を抑制する区域ですので建築計画を検討する場合には多くの制限を付される場合が多いので注意が必要です。

開発行為は、「建築等の目的で行う土地の区画形質の変更」のことを言います。この内容は記事としては膨大になるので、イメージとしては敷地規模が500㎡を越える場合には役所にて開発行為に該当するか否かを確認する必要があると意識しておくことです。もう1点は、お金がかかる内容が多いということです。事業費に大きく影響を及ぼすことが多いので覚えておきましょう。
土を、たくさん盛る、逆に切り崩す場合、切土・盛土といいますが、切土・盛土がどの程度までなら開発行為に該当しないのかは役所にて確認をするようにしています。また、造成や建築とは関係ありませんが、登記簿上の地目変更でも開発行為に該当することが多いので、このあたりの基本調査(敷地調査)も見落とさずに実施することを心がけましょう。
地区計画とは
地区計画とは、地区の課題や特徴を踏まえ、住民と区市町村とが連携しながら、地区の目指すべき将来像を設定し、その実現に向けて都市計画に位置づけて「まちづくり」を進めていく手法です。
地区計画で決めることは以下の通りです。
■地区計画の「目標」・「方針」決定。
地区内の人々が、まちの将来像を目標として共有することにより、まちづくりを実感し、目標の実現に向けた方針のもとに、地区としてのまとまり、一体感を持ったまちづくりを進めることができます。
■「地区整備計画」で道路・公園などの
位置や建築物などのルールを定めます。
「地区施設」や「建築物等に関する事項」など、
まちづくりの内容を具体的に定めます。
- 地区内に必要な道路や公園・広場などを
「地区施設」に位置づけ、必要な公共空間
が確保できます。 - 「建築物等に関する事項」で、建築物の用途
や高さなど、きめ細かなルールを決め、地区の
特性を活かした良好な住環境や街並みを守り、
または、誘導することができます。
■ その他、「土地の利用に関すること」で、
緑地の保全などを定めます。

地区計画の要綱見本を以下に添付します。
↓見本です↓
銀座地区地区計画
防火地域・準防火地域
「防火地域」「準防火地域」は、市街地の火災拡大を抑制するために、都市計画法に基づいて指定される地域である。一般的に、防火地域は都市中心市街地や幹線道路沿いに指定されることが多い。準防火地域は防火地域周辺の住宅地に指定されることが多い。
東京23区内だと東京大空襲の大火事の名残のせいか、城東地区の都市計画図を見ると、防火地域が占める割合が高い。防災の観点から指定される地域なので、建築物にも制限が付加されます。



防火地域・準防火地域での木造建築物の規制
最近は環境配慮が世界的なテーマとなり木造建築物への関心が高まっています。介護施設や文教施設に始まり、一般建築物への普及も推進されています。下記に、国土交通省のわかりやすい資料がありましたので、一部を抜粋しました。木造建築物の防火地域・準防火地域での規制をまとめておきます。




建蔽率・容積率の計算
1.建蔽率の計算
建蔽率とは建物の水平投影面積である建築面積の合計が、敷地面積に占める割合をいいます。
※水平投影面積は「建物を真上から見下ろした時の面積」とイメージしてください。
建蔽率=建築面積÷敷地面積×100(%)



2.容積率の計算
容積率とは、延床面積(各フロアー面積の合計)が敷地面積に占める割合をいいます。見方を変えると指定された容積率が200%という意味は、延床面積が敷地面積の200%(2倍)まで建築できるということになります。
容積率=延床面積÷敷地面積×100(%)
国土交通省のHPにわかりやす図表が掲載されいるので、抜粋致しました。特定行政庁指定の容積率と道路幅員から算定される容積率を比較し、値が小さいほうが採択されます。




建物高さへの制限
1.高度地区・斜線制限など
用途地域や建蔽率・容積率の規制に加え、主に高さに制限を与えるの高度地区や日影規制です。建物の全体面積のチェックと合わせて、高さ制限や隣地への日影の影響も加味しながら建築プランを作成する必要があります。
<高度地区>
敷地の北側隣地境界からかかる制限です。

<斜線制限>
道路斜線の図式資料がありましたので、イメージしやすように貼り付けました。最近では「天空率」という新しい法律もあり、道路斜線の緩和を受けることも可能です。全てを図示することは難しいので、必要に応じて役所確認をお願いいたします。

↓道路斜線のセットバックによる緩和↓

<隣地斜線>
高層化できるエリアでボリュームを消化する時に注意が必要です。高さに制限を加える斜線の1つですので記憶しておきましょう。
・道路に接する部分以外の隣地境界線から受ける高さ制限。
・住居系(低層住専系地域を除く):20m+1.25×隣地境界までの水平最小距離。
・その他の地域:31m+2.5×隣地境界までの水平最小距離。
日影規制
日影規制は、冬至日の午前8時から午後4時までに生じる日影を量を制限する規制で、真北測定(磁北ではない)によりデータをとる。太陽の軌道と方位から日影の量を測定するので、雨や曇りの日には真北測定ができない。以下、参考までに国土交通省のHPからイメージ図を引用した。

上図のように日影図を作成し、建物のサイズ調整を行う。商業地域には日影規制がない地域もあるが、住宅系の地域では日影規制はほぼ存在する。中高層建築物を計画する場合、近隣住民への説明資料として日影図は必須。この日影の影響により、容積率をフル消化できないことが多く、住宅系用途地域で容積消化を目指す場合、最もケアせざるを得ない規制です。
天空率
このほかに、天空率という法律もあり、大変重要です。しかし、天空率については記事上で説明するのは大変難しい。日影図のようにビジュアル化するためにはPCで計算をさせ、グラフィック処理を行うので当方のワープロ技術では、おぼつか無いというのが本音です。YouTube等で確認をお願い致します。
その他留意点
1.検査済証の確認
現行法規に対して不適格な部分が生じた建築物を「既存不適格建築物」と言います。老朽化した建築物には耐震基準や容積オーバーなど法改正により自ずと現行法規に適合しなくなってしまったと推測されます。
こういった建物も建築当時は合法的に建築されたか否かを立証する公的な証が「竣工検査済証」です。この検査済証が存在していれば、リフォーム事業や再生化事業を検討する際、事業検討しやすいのですが、検査済証が存在しなければ「既存不適格建築物」としてみなされるだけとなります。
こういったケースはよくあることですので、「検査済証」の確認は、頭の片隅に置いておくようにしましょう。
2.省エネ基準など
環境配慮に伴い、建物の断熱仕様や高性能給湯設備など、建築費は嵩むもののカーボンニュートラルには貢献するため採用せざるを得ないことが多くなった。一方で、国も環境問題への取組を真剣に検討すし推進するにあたり、助成金を交付するよう国家予算を組んでいる。
今後は常識的になりつつあるので、ZEHやZEB基準の変更内容や助成金を意図的に活用する企画を検討することが重要となろう。
以上